パンズ・ラビリンス
最後のネタバレは書いてませんが大筋を書いているので見ていない方は以下御注意を
ネット画像検索をすると、牧神パンよりもこの手のひらお化けのほうが沢山出てきます。登場時間はさほど多くないのにはやりインパクト大、このビジアル。
この手のひらお化けが「ちょっと可愛い」と思えるほどに、映画の中では現実のほうが残酷です。
どんどんひとが死んでいくし、それがなんとも思われないように淡々と流れるカメラ。
残虐なシーンがたびたび出てくるので、何度も一時停止しながら見ました。
これ映画館でみてたら途中退場したかもしれない。美しい世界と厳しい現実をいったりきたりします。
最終的に「ハッピー」なのかどうか見る人に全て委ねるようなラストシーンですが
わたしはハッピーエンドだったのだ、と願うことしかできない。思い出しただけでつらい。
美しいから目を離すことができなかったのも事実。魅力的な映画です。
チョークで扉を描くと向こうの世界に行けるというアイテムが出てくるのですが、ドラえもんに同じような道具があったなあーって思ったり、そのチョークを半分向こうの世界に落として来ちゃうんだけど、手のひらおばけがチョーク使ってこっちの世界に来たりして!とか、画面を直視しない方向に思考をずらしつつ見ていました。真面目に心酔はできなかった。
あと、大尉が不死身すぎて、肩刺されても口を切られてもおっかけてくるのは、どの化物よりも怖い。本当の鬼は人間なのです。
見終わった後の重い空気をずっしりと感じながら、壁にチョークの痕がないか探したくなった。(逃避)
↓押してくださると、生き返ります(わたしが)
サイダーハウス・ルール
壮大なオチは書いてませんが、ストーリーをなぞってしまってるので見てない方は御注意
孤児院で育った主人公が、外の世界を知って成長していく物語。
主人公がとても純粋なのですが危なっかしいぐらいの純粋さ。
そこ!ぜったい恋に落ちてしまうよ、行くな!行くな!・・・ほらーやっぱり!押すな押すな熱湯風呂ぐらいのお決まりコースです。恋愛風呂にドボーンです。
純粋さは恋だけにとどまらず、周囲誰一人文字が読めない中で自分だけ教養があるという事がわかったときも、全く威張らないんですね。素直に本を朗読してあげるし、壁に書いてある文字も読んであげる。わたしだったら「俺は読めるぜ~~~!すごいだろう」ぐらい言ってしまいそう。
やさしく、たのもしく、素直に育った主人公。
ずっと「自分は医者じゃない」と言い続けて、おじいちゃん先生から医者かばんが送られてきたときも
中身をみんなには見せずにベッドの下に隠すし
リンゴのボスが怪我をして娘がその傷を縫ってる時も絶対手出しはしなかったのですが
医者が必要なのっぴきならない状況の中で、「僕は医者だ、役に立ちたい」と勇気を出すシーンは、かなりぐっときました。おおお、とうとう言いやがった!がんばった!
一歩づつ成長していく青年の姿は、だんだんたくましくなって、最後故郷に帰ります。ついでに振られます。
自分たちを縛り付ける規則の中には、実は意味のないもの、重要だけど破ってしまうもの、これだけは守りたいものがあって、たくさんのルールにかこまれて生きているのだと故郷への列車のシーンで、タイトルに込められた意味に近づけた気がします。
孤児院のおませ女子がひっそりと主人公に恋心を抱いていて、会う前に大急ぎで身だしなみを整えたり、嬉しくて嬉しくてたまらないのに、クールな態度をとってしまう。大層じれったいです。おまえー!そいつ今フリーだから、失恋直後のチャンスだからもっと直球で行け!その仕草じゃ伝わらないよ!って言いたい。ぜんぜん気づく気配のない主人公だし鈍感ぽいし、こっちの恋ちゃんと実ってくれ。
あと音楽が素晴らしい。主人公ピアノが凛と立って、周囲の弦がそれを支えているのは、物語と通じるのですね。