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見て聴いて読んで描くよ

絶望名人カフカの人生論

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絶望名人カフカの人生論 /カフカ 編訳:頭木弘樹

 

今はもうあまり見ない顔文字「orz」これがぴったりな一冊。

どん底に居ながらも、刻銘に詳細に自分の心情を書き残す精神力。
超ネガティブ、もそれをあますところなく「絶望」を味わっている。
嫌な現実から逃げつつ、でもやせっぽちの自分と向かい合い、とことん己を追い詰めてしかもそれを他人(や父親)に手紙で伝えようとしちゃう。
自分の嫌な所って隠したくなるものじゃないのか。
カフカの自意識のメーターってどうなっていたのかなあ。こんな根暗な俺を知られるのは恥ずかしいという意識はなく、書かずにはおれないと切迫感がぎゅうぎゅう。
昨日を明日を嘆く言葉をスプリンクラーのように撒き散らす。
カフカの時代にツイッターがあったら、ツイ廃となってたんじゃないかと想像してしまった。

鬱蒼としたこころの闇のなか、書くことで言葉を依るがに生きていたのかな

太陽のひかりをみじんも感じさせないのに、沢山の汗をかいた後のようなデトックス感。
不思議と読み終わったあとはほがらかになるのでした。
ありがとうカフカ。横たわっていてもいいよと(は書いていないけど)認めてもらったような気持ち。
へこたれそうなひと、読んで。
たちゆかなくなったひとも。ぜひ。

昔聴いた深夜ラジオの、メールテーマが「だめな自分」だった時
全国から集まるとにかくダメなエピソードを
DJのひとと一緒に笑い飛ばすことで
本当に楽しくて、心が軽くなったことを思い出した。

 

***

 

もうふたつ読んだ

 

妄想力 / 茂木健一郎関根勤

少し前の本だけれど、そんなに古さは感じない内容。
妄想大好き関根さんの、ディティールの細か過ぎる妄想が秀逸。
発想もいいなあ、好きな子とデートするという定番妄想だって
きっと色鮮やかに脳内再生しているんだろう。
バナナになったら、誰に食べられたいかという妄想や
自分の体の臓器との会話まで、ふつうは辿りつけない妄想の境地へのいざないが満載。
相手の気持を察したり、誰かの思いを汲んだりする
その妄想がどういうふうにこころに(脳に)作用するかも指南してあって
笑えて気持ちが明るくなる本でした。
わたしも妄想は得意なほうだけれど、バナナになったことはないので
ちょっと明日からバナナになろう。

 

ごはんぐるり / 西加奈子
身近なごはんの事から、想像できないような場所での食事のお話も。
エジプトでの食(生活)事情もちらりと。
「活字ごはん」の章がとくに気に入ってしまった。
そうなのよ物語の中の文章であらわされたごはんは
しらない食べ物だったとしてもどんどん想像が膨らむんだ。
文字から匂い漂う経験を思い出させてくれる。
飲んだこともないお酒の銘柄から、味へのあこがれを膨らませたりした。
気になったのは去年ネットで流行していた10分どんべえをすでに実践していたこと。
この本は2013年の発行で、連載はそれ以前のはず。
あの流行はこの本が発祥なのかしら。